
丸みが息づく木の座標
KIDO MEIMOKUの名品
No.1886 吉野杉一枚板
背筋を伸ばさずとも、そのそばに座ると自然と気持ちが整っていきます。すっと低く構えたその姿には、凛とした芯とやわらかな表情が同居しています。手をかけすぎず、削りすぎず、木がもともと持っていた輪郭を尊重して仕上げたかたち。日々の暮らしの中で、いつのまにか心の拠り所になっている、そんな一枚です。
やさしさをたたえた広がり

まっすぐすぎない直線、均一でない年輪。目にするほどに、この木が長い時間をかけて育ってきたことが伝わってきます。見る角度によって見え方が少しずつ変わるその表情は、いつでも暮らしに寄り添い、そっと場の空気を包み込んでくれます。中心から広がる杢目に、心がふっとほどけるような感覚があります。

【 杢目・年輪 】
中心に浮かぶ節や、揺らぎのある木目のラインが、まるで風が吹き抜けた痕跡のように広がっています。年輪の幅や流れにばらつきがあることで、見る人によって受け取る印象も異なり、そこがまたこの一枚の奥行きの深さです。木が生きてきた過程そのものが、いまの姿に映し出されています。


【 色合い 】
芯に向かうにつれてやや赤みを帯び、外周に向けてやわらかな黄白色へと移ろう配色。まるで自然が描いたグラデーションのような色合いが、置く場所の光や壁の色によってさまざまに変化します。部屋に置くと、その場が少し明るく、あたたかくなったように感じられるやさしい木の色味です。

【 天板の厚み 】
この一枚は厚みがしっかりとあり、重心が安定しているため、目にも手にも安心感があります。天板の存在感が空間に芯を通しながらも、圧迫感を与えることなく馴染みます。厚みがあることで視線が自然に天板へ集まり、置いた器や花の輪郭が引き立ちます。道具としての頼もしさもそなえた佇まいです。

【 耳・皮 】
側面の耳は、木がもともと持っていた波のようなラインを手作業で丁寧に残しながら仕上げました。磨きすぎることなく、削りすぎることもない、職人の経験と感覚に任せた絶妙な仕立て。近づいて見れば、わずかな起伏や表皮の模様が残されており、触れたときに伝わるあたたかみがあります。木が持っていた個性を削ることなく、道具のかたちとして生かすための、静かな手仕事の積み重ねです。


【 機能性・使いやすさ 】
高さを抑えた設えは、床に座る時間を穏やかにしてくれます。大人4人でもゆとりを持って囲める広さでありながら、空間の圧迫感はありません。幅と奥行きがゆるやかに整えられており、真ん中に花器を置いても周囲がゆったり使えるつくりです。家族の団らんにも、ひとりの読書時間にも、自然と寄り添ってくれる一枚です。

【 製材 】
原木から一枚へ、芯を見抜く製材
この一枚は、太く重みある原木から切り出されたものです。木の芯を見極めながら、反りや割れの将来を考慮し、最も安定する向きでスライス。乾燥後には、わずかな捻れやうねりを修正しながら、理想の厚みに整えていきます。
一本の木が、一枚の板として生まれ変わるための、もっとも重要な仕立てのひとつです。
一本の木と向き合い、最も美しい形で命を残す――それが、製材という最初の仕立てです。
素材の個性を最大限に活かすために、手間を惜しまず時間をかけています。