
大地の記憶を宿す座標
職人の確かな手で仕上げる逸品
No.1863 栃一枚板
穏やかな低さが空間に広がりをもたらし、足を投げ出す動作さえも美しく映します。栃の木が持つ優美な表情を、限りなく自然なかたちで映し出した一枚。色味も木目も、決して主張することなく、深呼吸するような余白を日常へ与えてくれます。リビングというくつろぎの中心に、自然の時間が流れ始めます。
波紋のように広がる木理の詩情
一望したとき、まず目を奪うのは、波のように緩やかに流れる杢の連なりです。中央に宿る節と周囲へ広がる木理が、まるで水の中に差し込んだ光のように表情を変えていきます。視線の動きとともに変化を見せる木目は、室内に繊細な動きを与え、ひとつの情景を描き出します。見るたびに新たな発見があり、飽きのこない存在として空間に根付きます。

【 杢目・年輪 】
この板に現れている杢目は、栃特有の白太と赤味が交じり合いながら生まれる、柔らかなコントラストが魅力です。生長過程での湿度の変化や微細な気候差が、木目の曲線を生み出しています。細く波打つような模様は、静かな時間の中で蓄積された木の記憶。均整ではなく、自然が選んだ不規則さが、唯一無二の奥行きを与えています。

【 色合い 】
明るい黄褐色の中に、わずかに赤みを含んだ色調が差し込み、温かみのある落ち着いた印象を醸します。陽光が差し込む場所では明るく反射し、夜にはしっとりとした深みを見せる二面性。使い込むほどに色がなじみ、住まいの空気と呼吸を合わせるように艶を増していきます。
【 天板の厚み 】
目線の低いリビングの場において、この厚みは圧迫感を与えることなく、しっかりと存在を主張します。重厚さと軽やかさの絶妙な均衡が、空間に調和をもたらします。手を置いたときに伝わる安心感と、重みが生む静かな説得力。厚みのある板だからこそ可能な安定感が、くつろぎの時間を支えてくれます。

【 耳・皮 】
職人の手によって磨かれた耳には、樹の外皮が生きたままの表情で残されています。直線に削られることなく、自然が描いたままの曲線を活かすことで、この一枚にしかない輪郭が生まれました。刃物ではなく、時間が削ったような風合い。その仕上がりは、触れたときに手に伝わる温度や滑らかさに表れています。自然と人の技が響き合う、最も静かで最も雄弁な部分です。


【 機能性・使いやすさ 】
幅のある造りが、団らんの場を広く受け止め、奥行きのゆらぎが視線と動線に緩やかなリズムを与えます。横になって読書をしたり、お茶を囲んだり、日々の暮らしにしっくりと寄り添う安定感があります。6人で囲めるほどの広さながら、重たくなりすぎず、どの角度から見ても空間に自然に馴染みます。くつろぎの中心にふさわしい、誠実な佇まいです。

【 鉋加工 】
杢目の流れに寄り添い、面を整える
この一枚は、鉋を使って少しずつ平らに仕上げています。ただ平らに削るのではなく、杢目の向きや年輪の重なりを読みながら、刃の角度を細かく調整。無理に削れば、美しい木肌も傷んでしまうため、あくまで丁寧に、慎重に。
面を整えるというより、木の声を聴きながら、自然な形を引き出すような作業です。
手の感覚と経験を頼りに、滑らかで心地よい一枚に整えていきます。