
削り残した風のかたち
職人の確かな手で仕上げる逸品
No.1781 欅一枚板
一枚の中に、削ることのできなかった風景があります。まっすぐな線を意図的に拒みながら、欅のもつ自然なうねりに身を委ねてかたちを決めた板。その形状は、どこまでも自由でありながら、使い手の居場所を静かに示してくれるようでもあります。幅も奥行きも緩やかに揺らぎ、空間に置かれるとその場の輪郭までやわらかく変える力を秘めています。
うねりに呼吸する欅の記憶

この板の最大の魅力は、平面に宿る“揺れ”にあります。真俯瞰から見たとき、中心から外縁に向かって流れていく年輪の波が、まるで水面にひろがる風紋のように穏やかに拡がっていきます。乾燥や加工の工程を経てもなお、そのうねりは失われることなく残され、見る者の呼吸をゆっくりと整えてくれるかのようです。かたちではなく記憶を味わうような、そんな一枚です。

この一枚に宿る欅の杢目は、単なる模様ではありません。自然界で数十年、数百年と積み重ねられた季節の痕跡であり、樹が生きていた証そのものです。年輪は、中心から外に向かってしなやかに波打ち、ところによっては流れを乱すような節や瘤が立ち上がります。それらは風や雨、周囲の木々との関係性によって生まれたゆらぎであり、唯一無二の景色を生んでいます。


欅がもつ色味の美しさは、赤みを帯びた褐色の深みにあります。硬質でありながらも艶やかに光を含み、見る角度や光の具合によってその印象は微細に変化します。特にこの一枚では、中央に向かってやや濃淡のグラデーションが現れ、重なり合う色がまるで層のように感じられます。暮らしの中に置いたとき、時間ごとに表情が変わるその姿が、日々の風景に小さな感動を添えてくれます。

この板の厚みには、見た目以上の存在感があります。視線を落とすたびに立ち上がる端部の重みは、空間の中で自然と主役の輪郭を描いてくれます。軽やかでありながらもどこかしっかりとした佇まいがあり、日常のあらゆる場面に深みを与えてくれます。触れた瞬間の手のひらに感じる温もりも、木の厚みから伝わるものです。

側面に刻まれたこの自然なかたちは、製材の後、職人の手によって丁寧に磨かれた痕跡を残しています。鋸の通らなかった“耳”の部分は、木が本来もっていた姿の名残。無骨でありながらも滑らかで、削り過ぎない加減が絶妙です。触れると、波打つような柔らかさと、節のざらつきが同居しており、自然の造形美と人の手の技術が静かに溶け合っていることが伝わります。




幅はたっぷりと確保されており、ゆとりある人数での使用にも応えてくれます。奥行きは場所によって緩やかに異なり、それがまた空間に自然な陰影をもたらします。並んで過ごすときも、視線や距離がほどよく保たれ、食事や作業の場としても静かな集中を促してくれます。キッチン前やリビングの一角に置けば、その場の空気まで整えてくれるような静かな品格を漂わせます。