
揺らぎを映す削ぎ落とし
KIDO MEIMOKUの名品
No.1576 楠一枚板
すっきりとしたシルエットのなかに、木が長く生きてきた記憶が潜んでいます。流れるように現れる濃淡は、見るたびに新たな発見を与えてくれます。形を整えすぎず、木肌の個性をそのままに仕上げたこの板には、どこか人の手を超えた穏やかな息づかいが漂っています。空間に馴染みながらも、そっと場の輪郭をつくってくれる、そんな佇まいです。
揺らめく層が日常を染めてゆく

柔らかく折り重なる年輪が、ひとつの面に風景のように広がっています。乾いた大地に雨が染み込むように、色の変化が自然と混ざり合い、整いすぎないことの心地よさを教えてくれる一枚です。ゆったりとした輪郭を保ちながらも、細部には緊張感があり、目を凝らしたくなるほどの奥行きを湛えています。ふとした時間に、眺めることそのものが楽しみになる存在です。

【 杢目・年輪 】
柔らかな波のような杢目は、楠ならではの動きのある表情を引き出しています。成長の過程で自然に刻まれたその線は、まるで風に揺れる草原のよう。一点ずつ異なる表情をもつ杢目が、自然と空間の温度を高めてくれます。芯に近い部分と辺材とで現れる濃淡が、空間のなかに立体感を生み、シンプルな構成でも飽きのこない魅力となっています。


【 色合い 】
やわらかな琥珀色に、すっと差し込むような濃い茶の帯が混ざり合い、深みのある印象をつくっています。単調にならず、けれど主張が強すぎることもないこの色合いは、どんな部屋にも自然と溶け込みます。陽の光を受けたとき、色の階調が浮かび上がるその瞬間は、使う人の心にやさしく語りかけてきます。

【 天板の厚み 】
厚みを抑えたことで、天板が軽やかに浮いているように感じられます。視界を遮ることなく、空間全体をひとつにまとめてくれる佇まいです。厚さの控えめな造形は、手元に置いた器や書物が引き立つよう計算され、日常の営みが自然と整っていく感覚を与えてくれます。さりげなさのなかに、確かな存在感を持つ天板です。

【 耳・皮 】
両端には、木そのものの輪郭がそのまま残されています。職人の手でやさしく磨かれた耳は、触れるとどこかあたたかく、森の時間を感じさせてくれます。整えることよりも「生かす」ことを大切にした加工が、木の呼吸や揺らぎをそのまま食卓へと連れてきます。視線がふと触れたとき、そこに木の物語があることを思い出させてくれるような仕上がりです。


【 機能性・使いやすさ 】
4人で囲むのにちょうど良い広さがありながら、置いたときに圧迫感がありません。幅にゆとりがあるため、食事の時間だけでなく、手紙を書いたり本を読んだりと、さまざまな使い方ができます。奥行きには自然な揺らぎがあり、その揺らぎが部屋に柔らかなアクセントを与えてくれます。空間に呼吸を与えるような、軽やかで心地よいサイズ感です。

【 下塗り塗装 】
塗り重ねに宿る、仕上げの土台づくり
この一枚は、ウレタン塗装の下地として、複数回にわたり刷毛で下塗りを施しています。使用するのは、相性の異なる2種類の塗料。それぞれの特性を活かしながら、3〜5回重ねて塗布。ムラなく均一な仕上がりになるよう、細やかさと大胆さを併せ持つ職人の手仕事が求められます。
この下地づくりの精度こそが、最終的な美しさと耐久性を大きく左右します。
見えない部分にこそ、技と想いが込められています。